子どものこころとからだ発達医療部

子どものこころとからだ発達医療部長:竹重 博子

 当院では2001年から発達障がいのお子さんの療育を始め、2024年は24年目を迎えます。この度、院内のリハビリテーション部から、「子どものこころとからだ発達医療部」として独立しました。心と身体は繋がっています。子どもの健全な成長を目指して、さらなる充実を図っていく所存です。

 療育開始当初は、発達障がいのお子さんに対して周囲からは「わがままな子ども」と言われてしまうことがあり、お子さんの特性についての理解を得ることが困難でした。2005年発達障害者支援法、2006年障害者権利条約が国連で採択され、日本でもその批准に向け、制度改革がなされました。2007年学校教育法の一部改正によって特殊教育から特別支援教育に変わり、すべての幼稚園・学校において障害のある子どもの支援を充実していくことになりました。おかげで、社会全体で発達障害の理解も変わってきています。誰をも排除しない、障害のある者と障害のない者が共に学ぶインクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の時代になっています。

 どんなお子さんも、伸びる力を持っています。必ず成長します。当院では子どものこころ専門医、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚療法士)、PT(理学療法士)、公認心理師、看護師が、スタッフとしてお子さんに関わります。

 OTは、遊びを通して身体のスムーズな使い方や、道具の操作を指導します。感覚の受け取り方の偏りの原因を探り、生活場面でうまく適応する方法を考えます。適切な行動やコミュニケーションの取り方を練習します。

 STは、お子さんが今持っているコミュニケーション手段で生活しやすくするための練習や、代替手段の獲得に向けた支援を行っています。言葉の遅れや不明瞭さに対して口の動かし方の確認をしながら正しい発音が身につくよう練習します。

 PTは、歩行や関節・筋肉の使い方に問題のある方に対応しています。

 公認心理師は、心理検査の他に、ご家族の関わり方についてのアドバイスや、必要に応じてお子さんの面接を行っています。

 当院では、お子さんだけでなくご家族への支援を大切にしています。一対一の療育の場でご家族と話し合うだけでなく、子育て応援プログラムとして、療育の内容説明、お父さんとの話し合い、ご家族同士の話し合い、子どもへの対応方法の指導等を行っています。

 また一般小児科外来では、特性に配慮して看護師と協力して、疾患の治療や検査・予防接種等を行っています。

 ご家族の力、教育の力、地域の療育の力が大きく、医療のできることは限られていますが、他機関と連携して支援の方向を統一しながら、お子さんが地域で安心して生活できる方法を考えていきます。社会の変化に伴い、少子化、核家族化、遊び方の変化、睡眠不足等、子どもが十分に遊んで、心と身体が健やかに成長していくことが難しくなっています。お子さんとご家族に関わって、お子さんが少しでも良い方向に成長できるよう、ご家族が安心できるよう取り組んでまいります。

当 院 療 育 の 紹 介

小児OTチーフ:荻上健治

小児OT副主任:齋藤靖之

 当院のリハビリテーションで力を入れている、発達障がいをお持ちのお子さんの療育について紹介します。 ここ数年、メディア等で話題に挙がることが多くなった、発達障がいという言葉をご存じの方も多いのではないかと思います。当院では、発達障がいをお持ちの幅広い年齢層のお子さん(2歳~20歳前後まで)が、長野市内・外より1200名ほど来院されており、対象者数は県内随一を誇っています。こうしたお子さんに、OT(作業療法)・ST(言語療法)と併せ、公認心理師が介入しながら療育を実施しています。

 OTでは遊びを通して、身体のスムーズな使い方や道具の操作を練習しています。また、感覚の受け取り方の偏り(例:音や光などの刺激を強く感じすぎる)の原因を探り、生活場面でうまく適応するための方法を一緒に考えています。ご相談を頂くことの多い対人関係面では、お子さんと集団のルールを確認する中で、適切な行動やコミュニケーションの取り方を練習しています。

 STでは、お子さんが今持っているコミュニケーション手段で生活しやすくするための練習や代替手段の獲得に向けた支援を行っています。また、言葉の遅れに対して遊びやカードなどを用いた課題を行いながら、言葉や身振り・サインでの表現と言葉の理解を促しています。言葉の不明瞭さには、口の動かし方の確認をしながら正しい発音が身につくよう練習しています。

 公認心理師による介入では、お子さんの発達や関わり方についてご家族と一緒に考え、必要に応じてお子さんとの面接を行っています。また、発達や状態を理解するために心理検査も実施しています。

 これらの専門職種と医師、必要に応じてPT(理学療法)が院内で密に連携し協同しながら、万全の体制でお子さんの「育ち」を支えています。

 当院での療育の中で、特に大切にしていることがあります。

 一つ目は、お子さんだけでなくご家族の支援を大切にしている点です。お子さんの生活の主体は家庭です。病院に来ていただく時間は日常生活のほんの一瞬に過ぎず、お子さんへの支援すべてを療育だけでまかなうことは出来ません。そのために、ご家族からの相談に耳を傾けるとともに、1対1の療育に加えて、「竹重病院 子育て応援プログラム」と銘打って「子育てプラス」、「KATARIBA(かたりば)」、「パパトーーク」、「家族講座」などのプログラムを定期的に開催しています(※【プログラムの説明】を参照)。お子さんとご家族の両輪を支援することにより、日常生活がスムーズに進むよう関わっています。

 二つ目にお子さんを取り巻く、地域の関係機関との連携を積極的にしている点です。療育場面でのお子さんの様子を学校、行政、福祉サービスなどと共有し、支援の方向を統一しながら、地域で安心して生活できる方法を考えています。

 ここ数年、私達が当院に入職した頃から担当しているお子さんが高校を卒業され、進学・就職のご報告を頂くことが増えました。成人になったお子さんと過去のエピソードを振り返り、笑いあうこともあります。今が大変ですぐに状況が変わらなくても、長い目で見ると成長し、自分で決めた道に進んでいく姿を多く目にしています。こうした未来へつなぐことができるよう、スタッフ一同これからも頑張っていきます。

【プログラムの説明】

子育てプラス

 6~7組のご家族がグループを組み、ペアレントトレーニングを応用した家庭内でのお子さんとの関わり方の工夫を学ぶ会です。幼児期~小学校低学年のお子さん対象と小学校高学年~中学生のお子さんを対象の2グループでそれぞれ全5回のプログラムとなっています。

KATARIBA(かたりば)

 5~6組のご家族がグループを組み、ざっくばらんにご家庭や学校の出来事、最近のトピックス、それぞれの悩みや不安を共有しながら、大変だけど楽しい子育てに繋げられるよう企画しています。

パパトーーク

 お父さんを対象にした「パパの役割」や「パパだから出来る事」について講師から講義を聞く機会を作ると共に、参加者の生の声を共有しながら、パパの役割について考える機会にしています。

家族講座

  年に1回、作業療法士や言語聴覚士が子育てのコツに繋がる知識をWEB配信しています。  過去には「発達特性の理解と支援」や「ことばの発達」といったテーマでお話をさせて頂いています。今年度も「感覚と運動について」というテーマで講座を開催予定です。