糖尿病に関わるスティグマ ~糖尿病の名前が変わります~
内科医師:糖尿病・内分泌専門医 関戸 恵子
今回から糖尿病に関係する話題を連載させて頂きます。第1回は糖尿病に関わるスティグマについてです。
スティグマとは、特定の属性に対して刻まれる「負の烙印」という意味を持ち、誤った知識や情報が拡散することにより、対象となった者が精神的・物理的に困難な状況に陥ることを指します。糖尿病治療は近年向上し、血糖値を良好に保つことで健常者と変わらない生活を送ることができるにもかかわらず、必要なサービスを受けられない(保険など)、就職、結婚や昇進に影響する、 などの不利益を被るケースが報告されています。こうしたスティグマを放置すると、糖尿病であることを周囲に隠すようになり、結果として適切な治療の機会を失い, 糖尿病が重症化し合併症が進行する場合が出てきます. 結果として、国民全体の健康寿命の短縮や、差別による個人的、社会的レベルまで様々な悪影響を及ぼすことになります。
日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病患者さんをとりまくスティグマの重大な悪影響を改めて認識し、それを取り除くことで糖尿病であることを包み隠さずにいられる社会を作ることを目指しています。
このような流れから、2022年11月7日、日本糖尿病協会は1-2年以内に糖尿病という病名の変更を検討することについて発表しました。これは日本糖尿病協会が2021年11月から2022年9月までにインターネットで糖尿病の方1087人に対して調査を行った調査の結果を受けてのものです。調査では、糖尿病という名称について、27.4 %が「不愉快」、25.1%が「とても抵抗がある」と答え、「抵抗がある」、「少し気になる」という回答を含めると90.2 %に上ったとのことです。日本糖尿病協会の清野裕理事長は11月7日に開いたセミナーで「糖尿病に対する誤った認識が偏見を助長し、差別を生んでいる」と指摘しています。
過去には痴呆が認知症、精神分裂病が統合失調症と名称が変更されましたが、糖尿病の名称変更への取り組みがスティグマ解消への第一歩となることを願います。