~動脈硬化と糖尿病 悪玉コレステロール~

~動脈硬化と糖尿病 悪玉コレステロール~

内科医師:関戸恵子

糖尿病は、冠動脈(心臓を栄養している血管)疾患、脳血管障害に代表される、大血管障害の発症頻度が、糖尿病ではない方と比べると2-4倍程度高いことが知られています。この理由としては、糖尿病では高血糖、高血圧、インスリン抵抗性、内臓脂肪型肥満、脂質異常症といった、複数の危険因子を合併しやすいことが考えられます。そのため、総合的な動脈硬化の管理(血糖、血圧、コレステロール、たばこ吸っている方は禁煙)が求められています。

今回は、悪玉コレステロール(Low Density Lipoprotein : 以下LDL-C)のお話をします。

LDL-Cは、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っており、細胞膜の構成成分で必要不可欠ですが、増えすぎると血管壁にたまって、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。

LDL-Cの正常範囲は140mg/dl未満ですが、もともと動脈硬化のリスクがある糖尿病の方は、より厳格に下げる必要があり、120mg/dl未満を目標に治療します。糖尿病に加えて、冠動脈疾患を合併している場合はLDL-C 100mg/dl未満、冠動脈疾患に加えてさらに家族性高コレステロール血症、脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病など合併する場合はLDL-C 70mg/dl未満を目標にします。

悪玉コレステロールは食事の影響を受けるので、食生活の改善が必要となります。肉の脂身や鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪、ココナッツミルク、揚げてあるスナック菓子、パイ菓子、クッキー、ケーキ、卵類(鶏卵や魚卵)、内臓類(レバーやモツ)で上昇します。LDL-Cが高い方は、まず食生活の改善を試みる必要があります。重要なのはこれらの飽和脂肪酸の量を減らすことです。日本人が伝統的に摂取してきた、精白度の低い穀類、大豆、魚、野菜、果物、海藻、きのこを摂取して頂くのがおすすめです。

食事療法でも管理が難しい場合は、スタチン系と言われるLDL-C低下作用がある薬で治療を行います。スタチンで、LDL-Cが37mg/dl低下するごとに、総死亡リスクが9%, 冠動脈疾患イベントリスクが22 %, 脳卒中リスクが21 %低下することが報告されています1)。 

後発医薬品を使用する場合は、1錠あたり3割負担で4円から12円程度の薬です。医学的にも効果が実証されており、コストパフォーマンスも良好な薬なので、一次予防、二次予防の観点からもお勧めします。コレステロールの数値が高くても、自覚症状は全く出ないため、一度血液検査で確認しましょう。

Lancet 371 : 117-125, 2008.