⑥血糖値スパイクってなあに? 健診で、血糖値は正常の場合でも、食後高血糖になっているかもしれません!

内科医師:糖尿病・内分泌専門医 関戸 恵子

皆さん、健診は受診されていますか?健診で血糖を気にされている方は多いのではないでしょうか。健診は空腹時血糖(10時間以上食事を取らない状態で測定した血糖値のこと)の測定となっていますが、空腹時血糖が110mg/dl未満であれば正常と判定されています。空腹時血糖が大丈夫だから、自分の血糖値は大丈夫と思われるかもしれませんが、落とし穴があるかもしれません。

 血糖値スパイクという言葉があります。食後の血糖値が一時的に急上昇し、すぐ正常値に戻る状態を言います。空腹時血糖は正常値でも、この血糖値スパイクの状態になることがあります。食事をすると、食事中の糖分が吸収され血糖値が上昇します。この時、健康な人では、インスリンが働いて食後でも血糖値が140mg/dlを超えることはありません。しかしインスリンの働きが十分でない人は、食後血糖値が140mg/dlを超えてしまうことがあり、食前血糖と食後血糖で大きな波が出来ますが、その事を血糖値スパイク言います。血糖値が急上昇すると、過剰なインスリンが分泌されるため、血糖値が急激に下がるため、血糖値スパイクが起こります。

( 糖尿病ケアプラス2023年夏季増刊:メディカ出版より引用 )

血糖値スパイクは糖尿病の方以外に、耐糖能異常(糖尿病の手前の状態)の方、年齢を重ねると食後高血糖が起こりやすくなるので注意が必要になります。インスリンの分泌が年をとるごとに緩やかになるため40代ぐらいから健常者でも食後血糖が跳ね上がる傾向にあります。

 食後高血糖はさまざまな疾患のリスクとなります。糖尿病、脂質異常症、動脈硬化に伴って脳卒中、心筋梗塞、認知症、悪性腫瘍などを引き起こす可能性が高いことが分かっています。アジア人(日本人、中国人、インド人など)を対象とした調査(DECODA研究)では、経口ブドウ糖負荷試験2時間値のみが高値を示した糖尿病型の死亡リスクは、正常型の約3.5倍高く、空腹時血糖値がたとえ正常であっても、食後血糖値が明らかに高い人は、死亡リスクが高いことが確認されました。血糖値スパイクとされる食後高血糖は注意が必要になります。食後高血糖を調べる検査としては、下記のような検査があります。

  • 食後血糖を計測してみる:食べ始めてから1-2時間後に血糖を計測する。140mg/dl超は、食後高血糖の可能性がある。
  • HbA1c :1-2ヶ月の血糖の平均を示す数値。食後血糖値ではありませんが、耐糖能異常があるか、糖尿病が疑わしいかを判断する検査の1つです。
  • 75gブドウ糖負荷試験:糖尿病の診断のために行う検査で、ブドウ糖を摂取後、2時間まで投与前、30分、60分、120分で採血をして糖分負荷による反応を確認する検査(医療機関で医師に適応を判断してもらう必要があります)

次回は、血糖値スパイクを抑えるための食事や運動についてお伝えします。

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