糖尿病のお話④
糖質制限について
内科医師:糖尿病・内分泌専門医 関戸 恵子
2024年1月、あけましておめでとうございます。
年末年始はいかがお過ごしでしたか?この時期は、忘年会、クリスマス、お正月、新年会など、立て続けに忙しい時期なので、食生活の管理も難しいですよね。お正月明けにダイエットを決意し、今年こそ痩せよう!と毎年思うのは私だけでしょうか…
ダイエットと言えば、近年よく耳にするのが「糖質制限」や「低糖質」「低炭水化物」といったワードです。手近にあり、簡単に出来ることなので、ダイエットや糖尿病の悪化時に糖質制限からやってみようと思う方も多いと思います。しかしながら糖質制限については、落とし穴があります。
日本糖尿病学会は、「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量をはかることは、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない」としています。
糖質制限を行うと、自ずと増えるのが脂質摂取量になりますが、糖尿病は心血管疾患の大きな危険因子です。日本人の総エネルギー摂取量は、1960年代に比べて次第に減少し、2010年の調査では炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ72.1%→59.4%、14.8%→ 25.9%でした。こうした脂質栄養の過剰摂取が日本人の肥満や2型糖尿病の増加に大きく関与しており、糖尿病の予防の観点からも大きな問題となっています。
糖尿病における3大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物は全エネルギーの50~60% ( 150g/日以上 )、タンパク質は20%以下を目安とし、残りを脂質とする( 20~30% )ことを原則とされています。また脂質の内容についても、n-3系多価不飽和脂肪酸(食品:まぐろ、さば、鮭、さんま、あゆ、えごま油、アマニ油)の摂取量を増やし、トランス脂肪酸(食品:マーガリン、ショートニング)の摂取を抑えるなどの工夫が必要になります。
また気をつけたいこととしては、糖尿病を改善するのに、○○を飲んだら治る、△△が体によい、などの宣伝、またTVで□□を食べると血管に良い、などうたっていることがありますが、それに気を取られず、正しく情報を理解することも大切と思います。TVでナッツがよいとやっていたからたくさん食べる→ コレステロールが上がります、TVでリコピンが良いとやっていたからトマトをいっぱい食べる→ 血糖値が上がります、そんな落とし穴があります。
3食バランスの良い食事、付き合いでの食べ過ぎ・飲み過ぎは、1週間単位での調整を、地道に続けていきましょう。