糖尿病のお話⑦血糖値スパイクを抑える食事や運動とは
内科医師:糖尿病・内分泌専門医 関戸 恵子
昨年11月13日世界糖尿病デーのイベントを開催させて頂きました。当日は食後高血糖を抑えようというテーマでお話させて頂きましたが、お忙しい中ご参加頂きましてありがとうございました。本年も、糖尿病に関する有益な情報を、皆様と共有出来るように発信をさせて頂きたいと思っておりますのでよろしくお願い致します。
前回は食後の血糖値が一時的に急上昇する血糖値スパイクについてお話しました。今回は血糖値スパイクをおさえるための食事療法についてご紹介します。 食事療法は糖尿病治療の根幹となりますが、一番難しいことではないでしょうか。ある調査によると食事遵守出来たのは30%だったという報告もあり、いかに食事遵守が難しいことであるか、物語っていると思います。(愛知県立大学看護学部紀要vol.24, 57-67, 2018)食事療法が難しいのは、あなただけではありません。私自身も日々診療させて頂いていて、忙しい生活の中で、食事に気を遣うのがいかに難しいか、実感しています。今回は改めてポイントを絞って3点お話させて下さい。
1. バランス良くたべましょう
皆さんご存じの通りです。主食、主菜、副菜、それぞれのグループをそろえるようにしましょう。一品料理でも大丈夫です。
2. 野菜を先に食べましょう。
よく聞かれることだと思います。実際にデータで見てみましょう。これは糖尿病患者さんおよび、血糖正常者を対象に食事を野菜→タンパク質→炭水化物の順に摂取した人、炭水化物→タンパク質→野菜の順に摂取した日の血糖変動の違いを調べた物になります。同じ方が同じ栄養を摂取しても、食べる順序によって大きく血糖値が異なり、野菜を最初に炭水化物を最後に摂取するだけで食後血糖値が抑えられ、血糖変動も約30%減少したことを示しています。
月刊糖尿病 #152 Vol.15.No.5 P14より引用
3. わかっているけれどもやめられないおやつ!!おやつは取り方次第!!
おやつとの付き合い方は非常に難しいですね。やめられたくてもやめられない、生活の楽しみの一部でもあると思います。
①自分の嗜好品を摂るルールを決めましょう。減らす工夫、変える工夫をしましょう。太らないようにすることが基本です。
②タイミングを考えましょう
- 3食の一部として食べてしまう:時には食事(昼食)の一部として食べてしまう方法があります。糖質の量には注意が必要ですが、どうしても甘い物を食べたい時、例えば主食としてアンパン1個やに卵ツナコーンサラダ+牛乳などのタンパク質の食材を加えてみるとよいです。(その他:ショートケーキ+ささみと野菜のスープ+ヨーグルトなど)
- 食事をしっかりとっているけれど、おやつを食べたい時、時間を工夫してみましょう。これは、若年健康女性が完食を12時30分、15時30分、19時30分に接種したときの血糖値の推移を示した物になります。昼食直後の12時30分、夕食直後の19時30分におやつを食べた場合は、血糖上昇を認めていますが、15時30分に食べたときは食後血糖の上昇が、その他の時間よりも緩やかになっているのが見られます。どうしてもおやつを食べたい時、3時のおやつは理にかなっているかもしれません。
月刊糖尿病 #152 Vol.15.No.5 P18より引用
③炭水化物が少ないおやつに置き換えるのも一つです。
食事療法と聞くと少し堅苦しいかもしれませんが、自分の可能な範囲で継続していくこと、食事を楽しむことが大切だと思っています。もし、失敗しても大丈夫です。毎日のことですから、何度でも再挑戦してみてください。診察時の相談ももちろんですが、当院には栄養指導もありますので、外来で気軽にお話下さい。運動療法については、次回お話します。