糖尿病のお話⑨尿蛋白をチェックして、腎機能を守りましょう!!
内科医師:糖尿病・内分泌専門医 関戸 恵子
糖尿病というと、サイレントキラー(症状が表れなくても進行する病気)の代表格となりますが、糖尿病の影響で徐々に進行する合併症の一つが糖尿病性腎症です。
糖尿病性腎症は、透析の最大原因疾患となっています。糖尿病性腎症の重症化を予防して透析導入を減らすことは、QOLや生命予後を改善するために極めて重要な課題です。
糖尿病性腎症の発症に関わる危険因子は、高血糖、高血圧、高コレステロール血症、肥満などであり、腎症を予防するには、これらを良好に管理する必要があります。腎臓には「糸球体」という毛細血管が集まった組織が無数にあり、血液を濾過して、老廃物を尿へと排泄します。糖尿病性腎症になると、糸球体の機能が低下して、老廃物だけではなく、必要なたんぱく質も排泄されてしまいます。腎症は早期に発見し、腎臓を保護する治療に繋げていくことが非常に重要となります。そこで早期に発見するために必要なのが尿検査(アルブミン尿/蛋白尿)と、血液検査(腎機能:eGFR)になります。
この二つの指標を用いて、5つの病期に分類しています。

※糖尿病性腎症重症化予防 事業実施の手引き/厚生労働省より引用
まずは、医師に確認して、ご自身がどの分類にいるかを把握しましょう。
腎症第2期以下の人が、未治療などにより血糖コントロールが不良のまま経過した場合、徐々に腎機能が低下し始め、10-15年以上経過した頃には人工透析が必要な状態にもなりうるといわれています。腎症第2期までに適切な治療、管理をすることで、糖尿病性腎症の進行を遅らせることが期待できます。そのため、できる限り早期の段階から、治療に取り組むことが重要になります。
最近の大規模臨床研究の結果から、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬という種類の糖尿病治療薬が、腎症の進行を抑制する効果を持つことが明らかにされています。SGLT-2阻害薬とは、腎臓で血糖の再吸収を抑えて、尿中に糖を排出して、血糖を下げる薬になります。 EMPA-KIDNEY試験やDAPA-CKD試験で、腎臓機能悪化リスクがそれぞれ、28%、39%減少されました。
糖尿病があり、尿中アルブミン尿が出始めている方は、腎機能低下速度を緩めることが証明されているため、腎症悪化の予防の観点からも早期SGLT-2阻害薬を導入することがお勧めですが、副作用もあるので、メリット、デメリットについて相談して導入することになります。
GLP-1受容体作動薬であるリラグルチド、セマグルチドは大規模臨床研究において、腎症の進行を予防する効果を示しています。さらなる研究の結果が待たれるところです。
このように、腎機能の低下速度を緩めることが出来る糖尿病治療薬もありますので、まずは尿検査と血液検査での腎機能の把握を行い、腎臓を守る治療に繋げていきましょう。